| -司会-近況を教えてください。
-井之丸泰子(以下井之丸)-
コマーシャルの仕事でスチールとムービーをしました。いつもは、ブックという自分の作品集で、選考されるんですが、今回ははじめてオーディションを受けることになったんです。その場で髪も作ってくださいと言われて、こういうケースは聞いたことないし、私自身も初めての経験でした。
大変だったのは、オーディションだけじゃなく、モデルが女優さんだったので、髪が切れなかったこと。だから、ウィッグを使うしかなくて。自然さに加えて、さらさらつやつや感も要求される。相反することだから困りましたね。カラーの指定もあり、既存のウィッグでは無理なので、新たにウィッグを作ることになったんです。韓国や中国に工場を持ってる方に頼んだんですが、その人自身も岡山に住んでいらっしゃる方で制作に時間がかかりました。しかも、やっと出来たのに、メーカーさんの「このモデルは気に入らない」と言う鶴の一声で却下になりまして、来週撮影なのにどーすんですかって、大変でしたよ。モデルのオーディションからやり直しをして、昨日ようやく終わりました(笑)。
仕事はハードです。シャンプーのコマーシャルの時は、朝の8時30分から翌日朝11時くらい。ヘロヘロになりました。「JJ」とか一般
誌の撮影だと、時間をかけないのが普通です。ヘアサロンに依頼があるのは「明日か明後日撮るんで、モデルも用意して」という指定つき。雰囲気にあった子じゃないと、やりませんよの世界だから厳しいですよね。
-衛本真壱(以下衛本)-
サロンワークは?
-井之丸-
週に2~3日です。 青山と自由が丘で。青山は新規もうけつけてます。サロンワークが最優先ですが、突発的に仕事が入るので、あまり前もって予約を取ることはできないです。
-衛本-
どこのサロンも分業化をしているんですか?
-井之丸-
基本的にはシステム的には全店舗一緒です。
-司会-
モデルなどどんな子がやりやすいですか?
-井之丸-
容姿だけじゃなく、私が見て魅力的な人です。共通して言えるのは透明感のある人。本人は気づいてない事が多いけど、自分の意志を持ってる人。時代に流されていない人。その子にひかれた理由がわからなくても、話してみると気持ちが向いた理由が後で着いてくることがありますね。
-司会-
伊藤さんはご自身で撮影もされるそうですね。
-伊藤-
はい。
-井之丸-
自分でやる方が、かゆいところに手が届きますよね。カメラマンに依頼すると思い通
りにいかないことも確かにあるけど、その計算外が作品に大いにプラスになる場合が多々あります。
ある作品つくりの時、全くイメージと違うものが出来上がってしまって。入稿までに3日くらいしかないのに、撮り直しをすることに。モデルは4人で、ぎりぎりの日に奇跡的に集まってくれて、理由が理由だから、モデルもカメラマンも、もう精一杯。私もいっぱいいっぱいですよ。その時に自分の力じゃないものが動いてるなって感じたんです。その時のことがあるから、作品つくりに関して、遊びの部分を残すようにしています。現場で思わぬ
方向に行きそうな時もあるけど、逆にそのリスクを楽しんで、おもしろいものが出来たらいいなと。
-伊藤-
完全に井之丸さんご自身の作品の場合、周りの人に伝えるのはむずかしくないですか?
頭の中にあるものを、映像として表現してもらう時、カメラマンとかスタイリストとか。
ぼくの場合、スケールが全然違うかもしれないけど、「子どもが想像する大人世界」を撮ってくださいと依頼したことがあって。僕が想像する世界と、カメラマンのものとはズレがありますよね。だから、伝え方がとても難しかった。100%伝えるのは難しくて、でも、だから、さっきおっしゃられたことが楽しいのかなと。
-井之丸-
言葉でイメージを伝えるのは難しいですよね。でも、先ほども話しましたが、そこに相乗効果
が生れる。 雑誌の4ページを担当させてもらったことがあって。テーマは旅。意外性があるけど、かっこよくて旅とリンクできてて、なにがあるだろうって考えたとき、「キルビル」のブライダルシーンだなと思ったんです。用意周到じゃなくシチュエーションがロマンティックで、行った先でいきなり結婚するなんておもしろいじゃないですか。今の時代にあってて。フォトグラファーはスイスのミックケラー氏に依頼しました。いつか仕事をしたいと思っていた人です。有名だけじゃなく、彼の写
真はとてもクール、そしてシンプルで、甘さがない。
-伊藤-
イメージはかわいらしく、でも、カメラマンはクールっていうのはどうしてですか?
-井之丸-
私の言った通りだとかわいくなりすぎる(笑)。彼は、引いていってスタイリングをしていく人だから。制作に携わる他のクリエイターと、これは譲れる譲れないとか、譲ることによって失うものとか、パワーアップできるものがあって、そこが、コラボレイトのおもしろいとこですよね。
-衛本-
先ほどから、そこがキーワードになってますよね。掛け算の話だったり。客観的に自分を見て、最初から予測して引き算に持っていくということが。
-井之丸-
何度も痛い目にあってますけどね(笑)
-司会-
『CONKA』の特集が「モテ男モテ女」についてなんですが、モテたいというオーダーがきたらどのようにカウンセリングしますか?
-衛本-
表面的にモテたいのか否か、モテたいの意味を掘り下げて考えないと難しいですよね。「モテたい」が実はフラれたことから発生してるかもしれないから。髪形云々もそうですが、どんなモードなのかが重要かな。以前、お客さんで、泣きながら電話かけてくる子がいましたよ。その子にとって髪のことは二の次三の次で、まずは、話を聞いてほしいんでしょうね。
-井之丸-
え~、すごいですね!
-伊藤-
モテたいと言われたら、スタイルの話にならないかもしれないですよね。
最近髪の毛についてよく考えるんですが、唯一人間を裸にして他人と差をつけられるところじゃないですか。表現するのに有意だけど、モテたい時はやはり、内面
が一番だと思うし。ヘアスタイルじゃ表現できないんじゃないかな。
-井之丸-
私のお客様では、バイト仲間の男の子を振り向かせたいという子が来て。どんな髪形でもいいから、とにかく振り向いてほしいって。芸能人みたいに、ということだけど、やっぱりその子に似合うスタイルを提案しますよね。どういうモテ方なのかによるけど。自信を持っているときが一番輝けるから。パッと見、男好みの髪って確かにあるけど、それは、ほんの一時ですよ。その繰り返しでその人が幸せかと言えばそうじゃない。来るのを待つのではく、来るのが当り前だと思うくらい自信を持ってほしい。自身を持たせてあげたい。その人自身が輝けるスタイルを提案してあげたいですよね。
|